では、どのような関係ととらえればよいのか?新しい関係性とは、「売り手」「買い手」の関係ではなく、お互いに同じ目的に向かって異なる強みを発揮し合い、さらに新しい価値を生み出す大切なパートナーというとらえ方といえる。例えば、コーヒーにこだわりを持つお客様がいらっしゃるとする。同時に、専門店として素材、製法、提案の仕方にこだわりを持つコーヒー店があるとする。お互いに「こだわりをもって、よりおいしくコーヒーを飲みたい」という目的は一致する。コーヒー店のスタッフは、「最高の状態で飲むには」ということは知っているから、その情報を提供する。しかし、本当の意味でどのようなシチュエーションで、どのように飲むとどのように感じるかのバリエーションは、お客様の方が知っている。いわゆる、仮説に対する〈検証結果〉をより豊富に持つのは、実は提供側以上に、使用する側であったりする。しかし、「売り手」「買い手」の関係だけでは、販売する時点が関係性のピークとなる恐れがある。実際に使用してどうなのか?こちらが思う以上の使い方や価値の生み方があるのか?そこまでの興味を持てば、実は販売したところからが本当のパートナー関係造りの重要なステップとなる。ただし、一方的に「使ってみてどうでしたか?教えてください」と情報をとろうとするだけでは、わざわざそれを説明しなければならないお客様にとって、負担はあってもメリットは少ない。「実際に使用してどうなのか?どのようなバリエーションがあるのかを積極的に提供したい、あるいは提供するともっといいことがある」という魅力を感じていただく必要がある。
その関係性が構築できてはじめて「価値共創のパートナー」となれる。
私が以前お世話になったあるラグジュアリーブランドの店長は、そういう関係性を財産と考え販売前、販売時、販売後も丁寧にお客様とやりとりをしてきた。以下はその店長のお話である。「高級なバッグを販売する以上、最高の状態で使用していただきたいと思っています。ただし、素材が”革”である以上生き物なので、使い方、しまい方ひとつでもこちらが想定する以上の色々なケースが発生します。だから、私たちはお客様が実際にどのように使用され、どのように感じられるかを大切にする必要があります。もちろん、販売する時に取り扱いの注意点は説明はしますが、バッグのためにお客様が生活されているわけではない。だから何か思いがけないことがあってお客様が相談されてきたときにこそ、いろいろ知るチャンスがあります。『なぜ、こんなシミになるの?なぜ色が落ちてくるの?なぜこのプリントが落ちないの?』それらは、貴重な事例になります。もちろん〈品質管理〉の部署に問い合わせて、会社としての回答を用意はします。しかし、それで処理したと考えるのは怖いことです。私は、自分が購入した自社のバッグでお客様と同じような使い方を試してみることがあります。そのような使い方をするとどういうことが起こるのか、それはなぜなのか?どのような回復策が考えられるのか?であれば、どのような提案を先にお客様にすれば良いのか?それは、次に別のお客様に提案させていただくときにとても大切な情報になります。お客様が丁寧に教えてくださらなければ見過ごしてしまうことかもしれません。販売した後も、いえむしろ販売したところから関係性が始まると思っていただいているからこそ、使用した後のきめ細かな情報がいただけることに感謝してます。」
会社から「固定客を〇人つくるように」と指示をされ、どうしたら高額品を買っていただけるか、どうしたら再購入していただけるかだけに関心を払っていては生まれてこない発想である。ラグジュアリーブランドによっては「生涯にわたってお使いいただけます」とという言葉をスタッフが販売時に発している。ただしそれが単に「丈夫」「メンテナンスができます」というレベルのセールストークであるなら悲しい。その真髄は〈お客様の生涯のいろいろな場面で起こりうることを共有し、共にどうあるべきかを考えることで、さらに新しい、あるいはユニークな価値を生み出していく会社です〉という姿勢を伝えているという自覚があってこそ、ブランドとしてさらなる価値を生み出せるのではないだろうか。
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サービスデザイン研究所
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代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)
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