昨今はお客様のニーズも個別化しているため、接客をする際も、誰にでも話すような一般的な商品説明ではなく、お客様が何のために、何を、どうしたくて商品を見ていらっしゃるかを察知して対応しなければ、お客様の心をつかみにくい時代である。そのためにはスタッフは短時間でお客様の心を知るという難易度の高いことにチャレンジしなければならない。特にホテルやレストランとは異なり、店舗での販売となるとお客様側にも多少の警戒心はある。それだけに、さりげない「観察」から始まり、自然な会話、聞き出し、そして洞察に至る流れをスタッフ側が上手にリードする必要がある。
確かに売れている、あるいは顧客をたくさん持っているセールススタッフはその部分が優れている人が多い。端から見ると、特別に何か変わったことをしているようには見えない。しかし、なぜかお客様は笑顔で楽しそうに会話し、購入に至るケースが多い。それはあたか
も普通の人には見えない早さのボールがイチローには“止まって見える”という“動体視力”のように、特別に授かった能力のようにも見える。なぜなら、本人に聞いても、「特にすごく努力をしているわけではなく、自然と自分なりの接客スタイルとしてやっている」という答えが返ってくることが多いからである。
しかし、「なるほど、そういうものか」で終わるのか、「本人も意識していないけれど、その奥に必ず何かやっていることはあるはずだ」と考えるのかで、対応は異なる。
私がお会いした、販売成績においてあるラグジュアリーブランドの世界記録を持つ店長は、「それは天性のものではなく、意識と努力によるスキルです」と言い切った。彼女は、顧客の顔はもちろん、これまでの購入履歴や何気なくお話になったご家族構成や趣味、今楽しみにしていることなど、本当によく記憶していて、それを上手に毎回の接客で活用している。お客様がお店の前を素通りされようとしている際にも、「あら、〇〇様!今日お買い物ですか?」と声をかける。お客様が自分の名前を呼ばれて少し驚きながらも嬉しそうに反応すると、「またお待ちしてますね!」と元気良く対応する。そういう小さなことを大切にしている。そういうお客様は、数日後必ず店に立ち寄ってくださるそうだ。その際の会話でも、お客様は「本当によく私のことをわかってくれて、しかも私が忘れているようなことまでしっかり覚えていてくれて素晴らしい!」と感じる。だから、せっかく高額の物を買うなら、このくらい素敵な販売スタッフから買いたいと指名してくる。もちろんその際、彼女は的確な提案によって満足感をさらに高める。しかも彼女は一切妥協せず、いいと思ったものはトータルコーディネートで堂々とすすめる。なぜなら、お客様とのこれまでの関係から、お客様以上に、お客様がどうすればその服を着られる場面で最高になるかを理解しているという自負があるからである。
よくスタッフから、「店長は記憶力がいいですね」と言われるそうだが、彼女曰く特別に良いわけではなく、意識をしながら自分の記憶に刻んでいるという。それはある種トレーニングである。しかし、そういうトレーニングを日々の中で意識してやり続けているかいないかは、最終的には大きな違いになる。意識だけではなく、コンディションも大切であり、それを整えて接客に臨む姿勢なくしては不可能だという。早い段階から、「お客様とは一期一会であり、やり直しはできない」と接客をとらえ、その気持ちが一切色あせることなく何年も継続できていること自体が、大きなスキルや結果の違いに直結している。言い換えれば、やはりそういう心構えや努力は必ずお客様に伝わると言うことである。お客様は「プロを見抜く目」を持っており、その目はどんどん磨かれている。そういう厳しい時代である。
最後にそのラグジュアリーブランド店長が一番悔しそうに私に語ってくれた思いがとても印象に残った。
「ある若いスタッフが、仕事と家庭の両立で悩んでいました。『自分としてはこの仕事が好きだし、もっと上を目指したいと思っている。しかし、家族からは“そんな仕事は誰でも簡単にできる仕事だから、今辞めたって、またやりたいと思えばいつでもできるよ”と言われた。安心させようという気持ちもあったと思うが、複雑だった。』と言われました。私はとても悲しい思いをしました。なぜなら、ここまでやっても接客・販売という仕事への認知はまだまだその程度なのかと。しかし、だからこそ、私たちはしっかりプロの仕事を確立すると共に、スタッフに伝えていかなくてはならないという思いを強くしました。一人でも多くの人がプロ意識を持って研究を続ければ、必ず世の中の認知も変わります。この仕事がどれだけ難しいか、そして、その分やりがいがあるのかを理解してもらうという目標を持ってさらに頑張ります。」
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サービスデザイン研究所
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