2014年5月13日火曜日

価値観が多様化する中でのマネジメント

婦人服を扱っている会社が、ある年新卒採用に踏み切った。これまでは、メインのお客様は百貨店のお得意様をはじめ、富裕層のご年配の婦人が多く、商品知識や会話力等々を考えると、どうしてもある程度人生経験のある方が良いという判断で、中途採用のみを行ってきた。それはそれで即戦力となり、店舗に安定感を醸し出していた。しかし、徐々にお客様と共にスタッフも高齢化し、安定感が逆に停滞感につながりかねない事態になった。会社としても、新しい顧客層を開拓しなければ将来はない。その一環として、あえてリスクも考慮した上で新卒採用の道を選択した。しかしなにぶん、入社した側にも受け入れる側にも経験がない。当然想定されるのは『世代ギャップ』。新人からすれば、母親くらいの先輩スタッフの中で、社会人としてのスタートを切ることになる。これまでは横の友達関係は問題なく作れても、縦の関係自体が初めてである。しかも、学生時代とはルールが全く異なる環境、敬語もうまく話せない中での接客等々、自分で選択したとはいえ「ある程度頑張ればやれるのではないか」という自信が砕かれていく日々。誰もが最初経験することだが、そのくらい学生から社会人というのは実は大きな開きがある。



しばらくして、新人が配属された店舗の店長と話す機会があった。その際、私自身考えさせられる話を聞けた。店長曰く、
「結論から言えば、本当にいい経験をさせてもらっています。日々新卒とのコミュニケーションギャップに驚きながら、いかに自分が狭い常識の中で生きていたかがよくわかりました。例えば、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)。若い頃から先輩にたたき込まれ、なにかにつけてホウレンソウを行うのは当たり前の習慣になっていました。けれども、学生時代は確かに〈報告は求められればするもの〉という環境でした。だから、入社の研修の際に“報告をしましょう”と言われても、実際には『誰に・どのタイミングで・どのような報告をどのようにするのか』ということが具体的にわからなければ、躊躇してしまうのは当然かもしれません。また、”元気良く接客しましょう“と言っても、周りを見れば、先輩たちはお客様のタイプに合わせて柔軟な接客をしています。”元気良く”と言われても誰をモデルにすればよいのかわからないし、本当に全てのお客様に大きな声で元気良く挨拶しても怒られないのか、という不安もあります。そういう心理を受け止めた上でこちらの指示を出さないと、知らず知らずお互いに心の溝が大きく広がることに気づかされました。私はきちんと指示をしたつもりなのに、新卒がその通りやっていない。そういう事象だけを見て、”反発しているのかな”、”あんなに言ったのにもう忘れているのかな(物覚えが悪い)”、果ては”やる気がないのか”という気持ちにまでなってしまうことも数回ありました。しかし、人を動かし育てる際に、そういう枠でとらえてしまうと、皆それこそ「箸にも棒にもかからない」人たちになってしまいます。
考えてみれば、私たちは接客をしながら、常に「このお客様はなぜ私の提案を受け入れないのだろう?」「〇○様はもしかしたら~と思っていらっしゃるのかしら?」など、心を読むことを心がけます。それと同じように、新卒が思う通りに動いてくれない時は、”なぜ?”をもっとしっかり見つめることと、指示の出し方をできるだけ具体的に細かくする工夫が必要だと痛感しました。「ここを綺麗にしておいて」ではなく、「このショーケースに指紋がひとつも残らないようにしてください」、「〇○があった時は、必ずシフトが一緒の先輩に口頭かメモで△△という報告を義務として行ってください」、「お客様が入り口から一歩入られた瞬間に“いらっしゃいませ”と、あそこに立っている人に聞こえる位の声を出してください。1回やってみましょうか。そう、そのレベルです。」よく「子供じゃあるまいし、一を聞いて十を知れ」などと言いますが、私は”子供”だと思うことにしています。子供はパジャマの着方も歯磨きの仕方もまるでわかりません。そこで、手順を一つひとつ教えます。最初は逸脱することも多々ありますが、しばらくするとコツを飲み込み、正しいやり方で自分なりに工夫をし始めます。新卒となれば実際には数倍早くコツを飲み込み、実践してくれます。それを最初から”大人扱い”することで、逆に足下を不安にさせてしまっていたのだと反省しました。まずは”こんなことまで”と思うレベルで一つひとつ教えること。それによって教える側も基本の再確認になりますし、世代間ギャップ等もなくなり、気持ち良く働けます。」
そして、英語も話せる彼女はこう付け加えた。
「海外へ行くと、異なる国の人と働くのは当たり前です。誰かが『これが私の常識だ』と主張し始めるとチームワークなど生まれません。お互い違うと認めているからこそ明確なルールを決め、ギャップを埋めようとします。日本で働くと、そのあたりが緩くなってしまうんでしょうね。これからの時代は同じ日本人同士でも価値観も多様化していますから、マネージャーとしてもっとそういう柔軟性が嫌でも必要になると思います。そういう点でも本当に良い機会でした。」


人はお互いに違って当たり前。それを束ねるには、この店長のような物の見方や度量が必要なのだと実感させられた事例だった。

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サービスデザイン研究所
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