2014年5月24日土曜日

修理してでも使いたい!

ラグジュアリーブランドで高額な商品の購入を決める際、”使用していて何かあった時にもきちんと対応してくれるはず”という期待値がお客様の中にはある。だから「修理」とか「お直し」と言われるサービスこそ、お客様との継続的関係を創っていく貴重な機会ともなる。
修理を依頼されるお客様の背景も色々である。「まだ全部壊れたわけではないから、不具合の部分だけをなおして長く使いたい」というものから、「大切に長い 間使ってきたので愛着があり、捨てられない。ボロボロになっても、何とか使えるようにしたい」という思い入れまで、お客様の背景は幅広い。




私がお会いした中で、《新しい商品を気に入っていただいて販売できた喜びもあるけれど、私はむしろそれを修理依頼で持ってこられるお客様のお話をお聞きす るのが本当に勉強になります。できれば店頭に立って、すべての修理依頼を自分で受けたいくらいです。》というラグジュアリーブランドの店長がいた。彼女が出会った中でこれまで印象深いお客様のエピソードを聞いただけでも、その奥深さが伝わってきた。
  • 震災後間もないある日、まだ街に傷跡が残る状況下で店を開けるのを躊躇する気持ちもあったが、開店を待っていて、泥や油がついた当ブランドのバッグを 持ってこられた女性がいらっしゃった。「これ、修理できるかしら?」正直革も痛んでおり、回答に一瞬困ったが、《確認してみます》と答えた。その後、どう されたのかをさりげなくお聞きすると、「娘が就職した時に贈った唯一のブランドバッグで、それはそれは喜んで、《大切に使うね》と何度も言っていた。その 娘が亡くなった。バッグが発見されて、それを見ると正直心が痛むが、このバッグを持ったときの娘の笑顔が今では大切な思い出なので、できることなら元通り にしてほしい。」というご依頼だった。お話しをお聞きしながら、つい店頭で涙が出てしまった。

  • 男性のお客様が当ブランドの靴を修理してほしいとのご依頼。取り出してみると、本当に履きつぶした感じ。正直ぱりっとした印象の方なので、新しい靴をお すすめした方がいいかなと思った。ただ、それをお客様が察知して照れながらおっしゃった。「ボロい靴でしょ。買い換えた方がいいと思うでしょ。でもね、こ いつと僕は戦友なんですよ。ここ数年、本当に忙しく海外を飛び回ってきたんです。いつもこいつと一緒に。黙っているけど、一番僕の気持ちをわかってくれる 奴なんです。これでおさらばってかわいそうじゃないですか。できることがあればしてあげたいんです。」ここまでご主人に愛される靴も幸せだなと思いました。

  • お財布の修理を承ろうとした際、事情を添えて有償になりますと価格を提示したら、悲しそうな顔になった30代のOLさん。少し考え込むようにした後、 「やっぱりお願いします。」と決意したように依頼。そのまま手続きに入ってもよかったけれど、せっかくなので「思い入れがおありなんでしょうね」と言う と、「私の”勝負財布”なんです!。1年貯金してこれを買ってから、試験や就職などうまくいくことが多くなって。だから、これがなくなると怖いんです。不 安になると、”この財布が守ってくれる”と自分に言い聞かせているんです。修理代は思わぬ出費でしたけど、それも『もっと仕事を頑張ってお金を貯めろ』 と、この財布が言っているのかもしれません。」とのこと。日頃、バッグや洋服の高額品に慣れていると、だんだん金銭感覚がなくなって「今日はまだ財布一つ しか売れていない…」と思っている自分が恥ずかしくなりました。


もしかすると「修理ですね、承ります。」と数分で済んでしまう接点である。《色々と手続きや確認をして売り上げにならない面倒な作業》と思うスタッフもい るかもしれない。しかし、多くの商品の中から選び、購入し、使い、壊れた時に悲しさを感じ、わざわざ時間を作って、店が開いている時間に持ってきてくださ る。そのお客様の思いを考えると、有り難い(有るのが難しい)の一言しかない。」という店長は、「この店舗のこのステージには、お客様のドラマが詰まってますだから惹きつけられるんです。」と言って笑った。

商品は同じでも、使い手を通して様々な価値に変わっていく。売った後に想いを馳せる店長の感性がすばらしいと素直に感じた。

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2014年5月13日火曜日

価値観が多様化する中でのマネジメント

婦人服を扱っている会社が、ある年新卒採用に踏み切った。これまでは、メインのお客様は百貨店のお得意様をはじめ、富裕層のご年配の婦人が多く、商品知識や会話力等々を考えると、どうしてもある程度人生経験のある方が良いという判断で、中途採用のみを行ってきた。それはそれで即戦力となり、店舗に安定感を醸し出していた。しかし、徐々にお客様と共にスタッフも高齢化し、安定感が逆に停滞感につながりかねない事態になった。会社としても、新しい顧客層を開拓しなければ将来はない。その一環として、あえてリスクも考慮した上で新卒採用の道を選択した。しかしなにぶん、入社した側にも受け入れる側にも経験がない。当然想定されるのは『世代ギャップ』。新人からすれば、母親くらいの先輩スタッフの中で、社会人としてのスタートを切ることになる。これまでは横の友達関係は問題なく作れても、縦の関係自体が初めてである。しかも、学生時代とはルールが全く異なる環境、敬語もうまく話せない中での接客等々、自分で選択したとはいえ「ある程度頑張ればやれるのではないか」という自信が砕かれていく日々。誰もが最初経験することだが、そのくらい学生から社会人というのは実は大きな開きがある。



しばらくして、新人が配属された店舗の店長と話す機会があった。その際、私自身考えさせられる話を聞けた。店長曰く、
「結論から言えば、本当にいい経験をさせてもらっています。日々新卒とのコミュニケーションギャップに驚きながら、いかに自分が狭い常識の中で生きていたかがよくわかりました。例えば、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)。若い頃から先輩にたたき込まれ、なにかにつけてホウレンソウを行うのは当たり前の習慣になっていました。けれども、学生時代は確かに〈報告は求められればするもの〉という環境でした。だから、入社の研修の際に“報告をしましょう”と言われても、実際には『誰に・どのタイミングで・どのような報告をどのようにするのか』ということが具体的にわからなければ、躊躇してしまうのは当然かもしれません。また、”元気良く接客しましょう“と言っても、周りを見れば、先輩たちはお客様のタイプに合わせて柔軟な接客をしています。”元気良く”と言われても誰をモデルにすればよいのかわからないし、本当に全てのお客様に大きな声で元気良く挨拶しても怒られないのか、という不安もあります。そういう心理を受け止めた上でこちらの指示を出さないと、知らず知らずお互いに心の溝が大きく広がることに気づかされました。私はきちんと指示をしたつもりなのに、新卒がその通りやっていない。そういう事象だけを見て、”反発しているのかな”、”あんなに言ったのにもう忘れているのかな(物覚えが悪い)”、果ては”やる気がないのか”という気持ちにまでなってしまうことも数回ありました。しかし、人を動かし育てる際に、そういう枠でとらえてしまうと、皆それこそ「箸にも棒にもかからない」人たちになってしまいます。
考えてみれば、私たちは接客をしながら、常に「このお客様はなぜ私の提案を受け入れないのだろう?」「〇○様はもしかしたら~と思っていらっしゃるのかしら?」など、心を読むことを心がけます。それと同じように、新卒が思う通りに動いてくれない時は、”なぜ?”をもっとしっかり見つめることと、指示の出し方をできるだけ具体的に細かくする工夫が必要だと痛感しました。「ここを綺麗にしておいて」ではなく、「このショーケースに指紋がひとつも残らないようにしてください」、「〇○があった時は、必ずシフトが一緒の先輩に口頭かメモで△△という報告を義務として行ってください」、「お客様が入り口から一歩入られた瞬間に“いらっしゃいませ”と、あそこに立っている人に聞こえる位の声を出してください。1回やってみましょうか。そう、そのレベルです。」よく「子供じゃあるまいし、一を聞いて十を知れ」などと言いますが、私は”子供”だと思うことにしています。子供はパジャマの着方も歯磨きの仕方もまるでわかりません。そこで、手順を一つひとつ教えます。最初は逸脱することも多々ありますが、しばらくするとコツを飲み込み、正しいやり方で自分なりに工夫をし始めます。新卒となれば実際には数倍早くコツを飲み込み、実践してくれます。それを最初から”大人扱い”することで、逆に足下を不安にさせてしまっていたのだと反省しました。まずは”こんなことまで”と思うレベルで一つひとつ教えること。それによって教える側も基本の再確認になりますし、世代間ギャップ等もなくなり、気持ち良く働けます。」
そして、英語も話せる彼女はこう付け加えた。
「海外へ行くと、異なる国の人と働くのは当たり前です。誰かが『これが私の常識だ』と主張し始めるとチームワークなど生まれません。お互い違うと認めているからこそ明確なルールを決め、ギャップを埋めようとします。日本で働くと、そのあたりが緩くなってしまうんでしょうね。これからの時代は同じ日本人同士でも価値観も多様化していますから、マネージャーとしてもっとそういう柔軟性が嫌でも必要になると思います。そういう点でも本当に良い機会でした。」


人はお互いに違って当たり前。それを束ねるには、この店長のような物の見方や度量が必要なのだと実感させられた事例だった。

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2014年5月1日木曜日

部門間連携力の強化こそがブランドを強くする!

店舗のスタッフも、オフィスで働くスタッフも、自分のブランドに誇りを持っており、一人でも多くのお客さまにその価値を正しくご理解いただきたいという情熱は変わらない。どちらが上とか下とかいうことでなく、それぞれがそのために自分の役割を果たそうと考え、日々努力をしている。しかし、自分の役割責任をしっかり果たそうと考えるがゆえに、他部門に対して要求レベルが高くなると共に、同じ仕事をしているわけではないからこそ、優先順位のくい違いなどで、軋轢が発生しやすいのも事実である。難しいのは、他部門の仕事概要くらいは理解していても、お互いに忙しくて、今実際に抱えている課題や置かれている状況をつかむ余裕がないことである。もちろんミーティング等で情報共有機会は設けていても、なかなか踏み込んで、問題・課題をどう乗り越えるのかという議論をしっかり行える状況はまれである。お互いに「今こういう状況なので、ご協力よろしくお願いします」という表面的な報告で終わってしまっているケースも多い。しかも、同じ社内だという甘えから「わかってもらったはず」「理解を得られたはず」と思い込んでしまうところに、問題の原因が潜んでいたりする。そういった認識のずれを放置すると、「どうしてわかってもらえないのだろう」「なぜこんな要求ばかりしてくるのだろう」という他部門への不信感につながっていくことにもなりかねない。よく店長やスタッフから、「なぜこんな商品配分なのか理解できません。ウチの店舗ではもっと~という物が売れるのに。それも機会あるごとに伝えているのに、なぜかわかっていない!」また、「必要な時に必要な商品を素早く入れてもらわないと売り逃しになるのに、そういう状況がわかっていない!」などなど、日々数字と格闘する立場だけに、不満を聞くことも多い。一方、MDの立場からすれば、切実に1点でも多く売りたいのは店舗と同じである。そのために必死に考えているという自負もある。それなのに、お互いに心理的に溝ができてしまうのは、非常にもったいない状況である。


公募で店長からオフィススタッフになったある女性が、そういう状況を目の当たりにして言ったことがある。「違う立場に立ってみて、つくづく自分が知らない世界があったんだなあと思いました。最終的には、やはり本当に必要な情報、つまり、お互いに置かれている状況やそれをどうしたいと思っているのかという思いを共有できるかどうかで、動き方や連携の仕方は全く変わってくると感じます。実は、本当に強いブランドというのは、それを実践し、協力し合える状況を作り出している会社ではないかと思います。全ての仕事は”ニーズを満たすためにある”と考えれば、私自身ももっと視野を広げ、関係者の仕事に興味を持ち、関係者のニーズを積極的に把握し、それにどう対応すると全体が良くなるのかという柔軟な発想を持ち続けたいと思います。それは店頭でもオフィスでも全く同じです。一人一人のちょっとした考え方の持ち方で、もっとお互いに感謝し、助けあえる会社になると思います。私がオフィスに来たミッションに、それも含まれると思って頑張っていきます。」


話を聴きながら、昔、上司から情報ということについて教えられたことを思い出した。“情報”の「報」は知らせるという意味だが、「報いる」という意味でもある。では、何を知らせたり、何に応えるのかといえば、「情」=人間の感情である。文書や口頭で発信される言葉の背後には、その人の感情がある。それをしっかりくみ取ってどう応えるのかを考えることで、仕事や連携がうまくいくという教えだった。TOPの思い、苦情をおっしゃるお客さまの思い、本部からの通達の背景にある思い、店舗からの報告…全て何らかの思いや考えがある。そこまで読む力を磨きなさいということである。「人の心を掴むには、まずその人の考えを知ること」その本質を良くつかんで店舗で実践し、多くのファンを創り出し、スタッフからの信頼も厚かった彼女は、店舗同様、どこで働いても良い影響力を発揮し、求心力のあるいい仕事をしていくだろうと納得させられたのだった。

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2014年4月25日金曜日

路面店の厳しさをどう乗り越えるか

あるラグジュアリーブランドの路面店での話。
百貨店内に入ると色々と制約が出てくるが、路面店ではブランドが打ち出したいと思っているコンセプトをお客様にしっかり発信できる環境がある。 隅々までこだわった外観や内装、ゆったりとした優雅な雰囲気作り、行き届いた品揃え、特別なイベント…会社から与えられる経営資源はその分恵まれている。 しかし、当然それゆえの厳しさもある。
百貨店は基本的に立地が良く、店舗が集積しているため、入店客数もおのずと多くなる。また、百貨店ならではのイベントがある上、外商がついている富裕層も 多く、紹介もしていただきやすい。そして百貨店カードが威力を持っており、路面店で見た商品を優待がきく百貨店で購入するケースも多い。もちろんブランドとしては、お買い上げいただけるお客様は全てにおいてありがたい。しかし、店舗別に売り上げを問われる店長の立場からすると、 「せっかく時間をかけて丁寧に接客をしても、最終的に別の店舗でご購入となると残念な気持ちになる。」というのも当然である。それが続くとショップスタッフ のモラールダウンにもつながりかねない。こんな状況下で、店長はどうすべきか。
私がお会いした路面店の店長のタイプには大きく2通りある。
ひとつは、その責任と厳しさを早い段階でしっかりと自覚し、それを忍耐強くことあるごとにスタッフに浸透させ、実際に顧客化に成功しているタイプである。もうひとつは、頭では責任等を理解しているが、数字等のプレッシャーに負け、最終的にはスタッフと一緒に「この厳しい現実は会社にはわかってもらえない、 数字しか見てもらえない、こんな立地じゃお客さまは来てくださらない…」という愚痴が始まり、知らず知らず自ら店舗を沈滞ムードにリードしてしまうタイ プである。実はそういう状況下でこそ店長の、いやリーダーの真価が問われると感じる。毎日待てど暮らせど数組の接客しかできない、時間は持て余しがち、将来の不安が募る、せっかく来ていただいても空振り、通常であれば”あきらめ”の文字が頭をよぎる。それが現実である。
しかし、私がお会いしたある店長は、常に「だからこそ、実は自分との闘いなんですよ」とおっしゃった。自分の何と闘うのだろうか。店長曰く、「機会が貴重だからこそ、どうすれば着実に次につながる接客ができるのか、接客後のフォローをどうすべきなのか、自分の接客の何が足りないのか、お客様のためにどのような準備をすべきなのか、空いた時間をどう自分を高めることにつなげるのかなど、真剣に考えなければなりません。少しでも妥協すれば、雪崩のように全てダメになってしまいます。それをとにかくスタッフに理解してもらい、やってもらうことができるかどうかです。スタッフがそれでもわかってくれず不満な顔をしているのを見ると、時折心が折れそうになります。店長としての孤独感も感じます。しかし、そこであきらめたら負けです。繰り返し自分でしっかり目的に向かって計画を立て、粘り強く行動に移し、結果を深く分析し、次につながる知恵を出せるチームを作れるかどうかの闘いです。苦しい時ほど、今負けたら、この店舗を任せてもらった自分自身がリーダーとして負けたことになると自分に言い聞かせています。」
それは本当に強い信念を持ったリーダーの言葉だった。実際、その店舗には競合店ができ、さらにトラフィック減に歯止めがかからないという厳しい状況が続く中で、最終的には徐々に売り上げをV字型で挽回し、見事に顧客が定着する状況を作り上げた。誰もが「なぜそんなことができるのか?」と不思議に思う中、店長は、「特効薬を使ったわけではありません。地道にスタッフ一人一人に、絶対あきらめないこと、一つでも知恵を出してお客様に来ていただき、購入いただけるように行動すること、絶対にそれはお客様につながるということを確認し合ってきた結果です。私がこの店舗を任された最初の頃は、スタッフは暇そうで愚痴も多かったのですが、今では”色々考えてやること自体が楽しい”と言ってくれるくらい研究するようになった。そういうスタッフの成長こそが、今の数字です。私自身もこの 数ヶ月で本当に成長できたと思う。」と言った。 
存在価値=成果×困難度という公式があるが、「路面店を任されたから」といきなりあせって大きな花を咲かせることだけを考えるのではなく、冬には根を下にしっかり張ることで、時期が来たら必ず確実に大きな花が咲くように先を見すえた計画を立て、着々と手を打ち続けることの大切さに気づかされた事例だった。

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2014年4月12日土曜日

1回1回の接客の積み重ねが、世界記録につながる!

昨今はお客様のニーズも個別化しているため、接客をする際も、誰にでも話すような一般的な商品説明ではなく、お客様が何のために、何を、どうしたくて商品を見ていらっしゃるかを察知して対応しなければ、お客様の心をつかみにくい時代である。そのためにはスタッフは短時間でお客様の心を知るという難易度の高いことにチャレンジしなければならない。特にホテルやレストランとは異なり、店舗での販売となるとお客様側にも多少の警戒心はある。それだけに、さりげない「観察」から始まり、自然な会話、聞き出し、そして洞察に至る流れをスタッフ側が上手にリードする必要がある。 
確かに売れている、あるいは顧客をたくさん持っているセールススタッフはその部分が優れている人が多い。端から見ると、特別に何か変わったことをしているようには見えない。しかし、なぜかお客様は笑顔で楽しそうに会話し、購入に至るケースが多い。それはあたか も普通の人には見えない早さのボールがイチローには“止まって見える”という“動体視力”のように、特別に授かった能力のようにも見える。なぜなら、本人に聞いても、「特にすごく努力をしているわけではなく、自然と自分なりの接客スタイルとしてやっている」という答えが返ってくることが多いからである。
しかし、「なるほど、そういうものか」で終わるのか、「本人も意識していないけれど、その奥に必ず何かやっていることはあるはずだ」と考えるのかで、対応は異なる。
私がお会いした、販売成績においてあるラグジュアリーブランドの世界記録を持つ店長は、「それは天性のものではなく、意識と努力によるスキルです」と言い切った。彼女は、顧客の顔はもちろん、これまでの購入履歴や何気なくお話になったご家族構成や趣味、今楽しみにしていることなど、本当によく記憶していて、それを上手に毎回の接客で活用している。お客様がお店の前を素通りされようとしている際にも、「あら、〇〇様!今日お買い物ですか?」と声をかける。お客様が自分の名前を呼ばれて少し驚きながらも嬉しそうに反応すると、「またお待ちしてますね!」と元気良く対応する。そういう小さなことを大切にしている。そういうお客様は、数日後必ず店に立ち寄ってくださるそうだ。その際の会話でも、お客様は「本当によく私のことをわかってくれて、しかも私が忘れているようなことまでしっかり覚えていてくれて素晴らしい!」と感じる。だから、せっかく高額の物を買うなら、このくらい素敵な販売スタッフから買いたいと指名してくる。もちろんその際、彼女は的確な提案によって満足感をさらに高める。しかも彼女は一切妥協せず、いいと思ったものはトータルコーディネートで堂々とすすめる。なぜなら、お客様とのこれまでの関係から、お客様以上に、お客様がどうすればその服を着られる場面で最高になるかを理解しているという自負があるからである。

よくスタッフから、「店長は記憶力がいいですね」と言われるそうだが、彼女曰く特別に良いわけではなく、意識をしながら自分の記憶に刻んでいるという。それはある種トレーニングである。しかし、そういうトレーニングを日々の中で意識してやり続けているかいないかは、最終的には大きな違いになる。意識だけではなく、コンディションも大切であり、それを整えて接客に臨む姿勢なくしては不可能だという。早い段階から、「お客様とは一期一会であり、やり直しはできない」と接客をとらえ、その気持ちが一切色あせることなく何年も継続できていること自体が、大きなスキルや結果の違いに直結している。言い換えれば、やはりそういう心構えや努力は必ずお客様に伝わると言うことである。お客様は「プロを見抜く目」を持っており、その目はどんどん磨かれている。そういう厳しい時代である。
最後にそのラグジュアリーブランド店長が一番悔しそうに私に語ってくれた思いがとても印象に残った。 
「ある若いスタッフが、仕事と家庭の両立で悩んでいました。『自分としてはこの仕事が好きだし、もっと上を目指したいと思っている。しかし、家族からは“そんな仕事は誰でも簡単にできる仕事だから、今辞めたって、またやりたいと思えばいつでもできるよ”と言われた。安心させようという気持ちもあったと思うが、複雑だった。』と言われました。私はとても悲しい思いをしました。なぜなら、ここまでやっても接客・販売という仕事への認知はまだまだその程度なのかと。しかし、だからこそ、私たちはしっかりプロの仕事を確立すると共に、スタッフに伝えていかなくてはならないという思いを強くしました。一人でも多くの人がプロ意識を持って研究を続ければ、必ず世の中の認知も変わります。この仕事がどれだけ難しいか、そして、その分やりがいがあるのかを理解してもらうという目標を持ってさらに頑張ります。
いつお会いしても好奇心たっぷりの大きな目で見つめられると、私自身つい心を開いてしまう。単なる売り方だけでない素晴らしい人間教育も行っている店長である。

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2014年3月29日土曜日

カリスマ店長がぶつかった壁

私の中で未だに忘れられない接客がある。あるジュエリーブランドの銀座ブティックでの体験だ。
見るからにゆったりとした優雅な雰囲気を醸しだしている40代の男性スタッフで、少々位負けしてしまいそうな印象を持ってしまうが、それを裏切る謙虚な姿勢で話しかけてきてくれる。こちらのペースに合わせて決して焦らせない。その意外性がまず驚きであった。あれこれ見ながらおずおずと「このリングがシンプルで素敵ですね」とこちらからいうと、トレイの上にすっとそのリングを出して見せてくれた。そこからのトレイの上のリングの動きはまさしく魔法だった。指の動きひとつひとつがさりげないようで、リングの最も美しい角度を知っていて、リングが自ら語りるかけるかように輝きを放たせる。心地よいストーリーが耳から入ってくるが、いつの間にかそのハーモニーで目はリングの動きに釘付けになっていた。先ほども別のブティックで同じリングを見たはずなのに、全く別物としか思えない魅力を醸しだし、”こんな素敵なリングはここでしか買えない!” と思っている自分に驚いた。その瞬間すっと、「全身鏡で身につけたところをご覧いただくのが一番ですよ。」とエスコートしてくれて、それをつけた自分は別の自分になっているように思えた。「見せる」のではなく「魅せる」という接客である。
 「高額なので一度考えてみます。」と買いたい衝動をぐっと抑えて伝えると、「左様でございますね。では、私本日7時まではこちらにおりますので、それまでゆっくりお考えください。」と後余韻までしっかり考えた対応だった。数時間考えたが、「どうせ買うならあの人から買うのが一番の贅沢だ」とい う確信を強くして、お店に引き返すことになった。そのくらい心をつかむ接客だった。
 実はその人は店長で、後日研修でお会いすることになるのだが、その話をすると店長から返ってきた言葉は以下の通りだった。
「私は一言で言えば銀座のお客様に相当鍛えていただきました。銀座という場所は厳しい基準を持ったお客様ばかりです。そのお客様に認めていただ くには、普通のことをしていてはとうてい無理です。研究に研究を重ね、どうすればもっと洗練された接客になるのか、奥深い接客になるのか、そして喜んでいただける接客になるか、考え続けなければなりません。それを何十年も考えてきた結果が今のような接客スタイルになっています。私はこの銀座という場所で働 くことに誇りを感じています。もちろん観光客の方、若い方もいらっしゃいますし、そういう方からも学ぶことは多々あります。ある意味一客一客が真剣勝負だからこそ、やりがいがあります。」
まさしくアート(芸術)と感じた接客を創り出していたのは、そういう信念からだったのだと気づかされた。
ところが、残念なことに、その店舗では他のスタッフの売り上げが伸び悩んでいたのである。その理由としては以下のことが考えられる。
  1. あくまで店長だからできる接客であって「とうてい自分には真似できない」とスタッフが思い込んでいる。また、価値観が多様化する中で、そこまでの努力を必死に行うほどの動機づけができない。
  2. 店長自身も「具体的に何をどうすれば自分に近づけるのか」をステップ化して説明できない。
  3. 店長が高い売り上げを一人で上げるので、スタッフはそのフォローで満足してしまう。
  4. 店長は売り上げ責任が最優先するので、どうしても個々のスタッフのマネジメントが希薄になる。
しかし、一番の問題はある時つぶやいた店長の心の中にあった。
「お客様にご満足いただくためのパッションは長年誰にも負けないと思ってやってきました。しかし、スタッフは自分で選んで採用しているわけではなく、正直あまりに考え方が幼くて驚くこともあります。それをいちから育成するというのは私にとっては気の遠くなることです。お客様はしっかり対応すると 応えてくださるし、それが結果となって跳ね返ってくるので大きなやりがいになります。しかし、スタッフは今日注意したことが、明日できていない。、時折むな しくなります。本当のところ、販売に向かっている方が自分らしくやれます。私は店長には向かないのかもしれません。」
自分と異なる価値観・スキルのスタッフを育成する仕事は、“忍耐”が伴う上に感情も入り込んでくるため、ケースによっては大きなストレスともなる。お客様は“合わない”となれば、相互に離れられるが、スタッフとの関係はそう簡単にいかない。カリスマであればあるほど求める基準が高い分、その ギャップが大きいのではないだろうか。しかし、店長自身も最初からカリスマ的に売れたわけではなく、努力した結果であると同様、育成も最初からうまくいくのではなく、研究を重ねることが必要である。それができるかどうかは、最終的に店長の育成に対する「パッション(情熱)」が影響する。店長はカリスマ販売員としての自分のビジョンは 鮮明に描けるが、スタッフが生き生きと働くビジョンを描けないまま店長業務を行っていることで、自分の中に大きな葛藤を抱えてしまった。店長になるには、やはりそれだけの“覚悟”が必要なのだと改めて気づかされたつぶやきだった。

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2014年3月23日日曜日

ファンづくりの努力があってこそ、お客様との価値共創が可能になる!

これまでの販売の仕方は「売り手」と「買い手」の関係をどう良好にし、スムーズに買っていただけるかを前提にしてきた。しかし、今やお客様の方が早く、豊富な情報を持っていることが多い時代である。「商品についての良さをわからせる」ことを前提に、商品知識を勉強し、説明トークを練習するだけでは、結果的に”押しつけ”になってしまうこともしばしばある。もちろん、プレゼンテーションはいつの時代も必要であることに変わりはないが、お客様との関係性のとらえ方をさらに進めて考えると、同じプレゼンテーションももっと威力を持つ。


では、どのような関係ととらえればよいのか?新しい関係性とは、「売り手」「買い手」の関係ではなく、お互いに同じ目的に向かって異なる強みを発揮し合い、さらに新しい価値を生み出す大切なパートナーというとらえ方といえる。例えば、コーヒーにこだわりを持つお客様がいらっしゃるとする。同時に、専門店として素材、製法、提案の仕方にこだわりを持つコーヒー店があるとする。お互いに「こだわりをもって、よりおいしくコーヒーを飲みたい」という目的は一致する。コーヒー店のスタッフは、「最高の状態で飲むには」ということは知っているから、その情報を提供する。しかし、本当の意味でどのようなシチュエーションで、どのように飲むとどのように感じるかのバリエーションは、お客様の方が知っている。いわゆる、仮説に対する〈検証結果〉をより豊富に持つのは、実は提供側以上に、使用する側であったりする。


しかし、「売り手」「買い手」の関係だけでは、販売する時点が関係性のピークとなる恐れがある。実際に使用してどうなのか?こちらが思う以上の使い方や価値の生み方があるのか?そこまでの興味を持てば、実は販売したところからが本当のパートナー関係造りの重要なステップとなる。ただし、一方的に「使ってみてどうでしたか?教えてください」と情報をとろうとするだけでは、わざわざそれを説明しなければならないお客様にとって、負担はあってもメリットは少ない。「実際に使用してどうなのか?どのようなバリエーションがあるのかを積極的に提供したい、あるいは提供するともっといいことがある」という魅力を感じていただく必要がある。
その関係性が構築できてはじめて「価値共創のパートナー」となれる。


私が以前お世話になったあるラグジュアリーブランドの店長は、そういう関係性を財産と考え販売前、販売時、販売後も丁寧にお客様とやりとりをしてきた。以下はその店長のお話である。
「高級なバッグを販売する以上、最高の状態で使用していただきたいと思っています。ただし、素材が”革”である以上生き物なので、使い方、しまい方ひとつでもこちらが想定する以上の色々なケースが発生します。だから、私たちはお客様が実際にどのように使用され、どのように感じられるかを大切にする必要があります。もちろん、販売する時に取り扱いの注意点は説明はしますが、バッグのためにお客様が生活されているわけではない。だから何か思いがけないことがあってお客様が相談されてきたときにこそ、いろいろ知るチャンスがあります。『なぜ、こんなシミになるの?なぜ色が落ちてくるの?なぜこのプリントが落ちないの?』それらは、貴重な事例になります。もちろん〈品質管理〉の部署に問い合わせて、会社としての回答を用意はします。しかし、それで処理したと考えるのは怖いことです。私は、自分が購入した自社のバッグでお客様と同じような使い方を試してみることがあります。そのような使い方をするとどういうことが起こるのか、それはなぜなのか?どのような回復策が考えられるのか?であれば、どのような提案を先にお客様にすれば良いのか?それは、次に別のお客様に提案させていただくときにとても大切な情報になります。お客様が丁寧に教えてくださらなければ見過ごしてしまうことかもしれません。販売した後も、いえむしろ販売したところから関係性が始まると思っていただいているからこそ、使用した後のきめ細かな情報がいただけることに感謝してます。」


会社から「固定客を〇人つくるように」と指示をされ、どうしたら高額品を買っていただけるか、どうしたら再購入していただけるかだけに関心を払っていては生まれてこない発想である。ラグジュアリーブランドによっては「生涯にわたってお使いいただけます」とという言葉をスタッフが販売時に発している。ただしそれが単に「丈夫」「メンテナンスができます」というレベルのセールストークであるなら悲しい。その真髄は〈お客様の生涯のいろいろな場面で起こりうることを共有し、共にどうあるべきかを考えることで、さらに新しい、あるいはユニークな価値を生み出していく会社ですいう姿勢を伝えているという自覚があってこそ、ブランドとしてさらなる価値を生み出せるのではないだろうか。

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サービスデザイン研究所
Service Design Institute
代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)













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