2014年5月28日水曜日

近い将来に何が起こる?

最近「ビッグデータ化」というワードを新聞などでもよく見るようになった。”なんだろう?”と思っている間に、思いがけないスピードで自分の生活に大きなインパクトをもたらす時代である。ビッグデータもその一つである。例えば、あるサイトではビッグデータの活用法について以下のように記載してあった。
「損害保険会社が、カーナビのGPSから契約者の運転状況を詳細に把握することで、年齢、走行距離、免許の種類といった情報だけでなく、契約者 ごとに実際の走行や運転の状況を知り、契約者個々をリスク分析することで、マージンの確保と契約者の価格満足度を両立するといった例です。または、クレ ジットカード会社がカードの利用された場所と利用者のスマートフォンのGPSデータを照合することで、不正利用を検知することも考えられています。」http://www.hitachi.co.jp/products/it/bigdata/column/column02.html
 店頭で、熱心に「お客様の情報を収集し、お客様にあった個別提案力を強化しよう!」と力を入れている何倍ものスピードで、ITが個々のお客様の 行動履歴も含めた情報分析を詳細に行い、何をすべきかを教えてくれる時代に突入している。事実、あなたに対しても、オンラインでの閲覧履歴等から何に興味 を持っているかをつかみ、日常的に個別提案をしていないだろうか。では、それに対してラグジュアリーブランド店長として何ができるのだろうか?昨今では店舗にiPadが支給され、お客様に素早く映像での提案ができたり、スマホを使って個別のお客様との電話・メールが可能になったり、以前から行われているCRMによる分析もより工夫されるようになってきた。しかし、このように会社から与えられる環境に依存しているだけでは、時代のスピードについてはいけない。

私がお会いしたあるラグジュアリーブランドの店長は、以下のように言った。「もちろん個々のお客様の購入履歴や嗜好から、”次はこういうものをお求めになるかな”という仮説を立てることは大切で、商品説明会の段階か ら、どなたに何をどうおすすめしようか一生懸命考えます。もしかしたら、その部分はすでにITでかなり精度の高い提案ができるかもしれません。単に商品の 購入だけを目的としているお客様なら、納得感も高いと思います。ただ、私達のお客様はそういう方々ばかりではありません。よく言われる”付加価値”を楽しむために買い物をされる方が 多くいらっしゃいます。『いつの間にか行動履歴のデータを全部把握されていた』というのではなく、店舗でのもてなしやスタッフとの楽しい会話、色々なモノ の中から自分の気分で選ぶ楽しみ、思いがけないサプライズ提案による新しい自分の発見、周りからのフィードバック…そういった生活や人生をより豊かにする ための時間、空間、情報も含めて”体験する価値”を求めてわざわざ店舗に足を運んでくださるお客様の期待に応えてこそ、ラグジュアリーブランドと言えるのではないかと思います。そういうニーズと会社からの期待がある限りは、やはりお客様への関心、共感や配慮といった人の心でなければできないことを大切に磨いていきたいと思います。そのためにはやはり、どうすればスタッフがそのレベルに達成するかを私自身がもっと研究する必要はありますね。店長として大変な時代であることには変わりありません。
そう言った後、彼女は心配そうに「こういう考え方自体が古いのでしょうか。時々自分でも時代に乗り遅れているのではないかと心配になります。」
と付け加えた。

よく、「時代を読め、時流にのれ」と言うが、単に目の前のトレンドにのっかると言うことではなく、この店長のように激変する環境をふまえて、自店の強みを活かして何をどう変えるのか、何を変えないかを決断していくことこそがまさに時代が求めていることなのだと考えさせられた。
もちろん、それが正しいか、正しくないかはやってみなければわからない部分もある。なぜなら、その答えはお客様しか持っていないのだから。いずれにせよ、ITの進化を活用するのも人間であり、店長として誰のためにどう活用するのかを主体的に考えることは、今よりももっと求められることだけは確かである。

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代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)













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2014年5月24日土曜日

修理してでも使いたい!

ラグジュアリーブランドで高額な商品の購入を決める際、”使用していて何かあった時にもきちんと対応してくれるはず”という期待値がお客様の中にはある。だから「修理」とか「お直し」と言われるサービスこそ、お客様との継続的関係を創っていく貴重な機会ともなる。
修理を依頼されるお客様の背景も色々である。「まだ全部壊れたわけではないから、不具合の部分だけをなおして長く使いたい」というものから、「大切に長い 間使ってきたので愛着があり、捨てられない。ボロボロになっても、何とか使えるようにしたい」という思い入れまで、お客様の背景は幅広い。




私がお会いした中で、《新しい商品を気に入っていただいて販売できた喜びもあるけれど、私はむしろそれを修理依頼で持ってこられるお客様のお話をお聞きす るのが本当に勉強になります。できれば店頭に立って、すべての修理依頼を自分で受けたいくらいです。》というラグジュアリーブランドの店長がいた。彼女が出会った中でこれまで印象深いお客様のエピソードを聞いただけでも、その奥深さが伝わってきた。
  • 震災後間もないある日、まだ街に傷跡が残る状況下で店を開けるのを躊躇する気持ちもあったが、開店を待っていて、泥や油がついた当ブランドのバッグを 持ってこられた女性がいらっしゃった。「これ、修理できるかしら?」正直革も痛んでおり、回答に一瞬困ったが、《確認してみます》と答えた。その後、どう されたのかをさりげなくお聞きすると、「娘が就職した時に贈った唯一のブランドバッグで、それはそれは喜んで、《大切に使うね》と何度も言っていた。その 娘が亡くなった。バッグが発見されて、それを見ると正直心が痛むが、このバッグを持ったときの娘の笑顔が今では大切な思い出なので、できることなら元通り にしてほしい。」というご依頼だった。お話しをお聞きしながら、つい店頭で涙が出てしまった。

  • 男性のお客様が当ブランドの靴を修理してほしいとのご依頼。取り出してみると、本当に履きつぶした感じ。正直ぱりっとした印象の方なので、新しい靴をお すすめした方がいいかなと思った。ただ、それをお客様が察知して照れながらおっしゃった。「ボロい靴でしょ。買い換えた方がいいと思うでしょ。でもね、こ いつと僕は戦友なんですよ。ここ数年、本当に忙しく海外を飛び回ってきたんです。いつもこいつと一緒に。黙っているけど、一番僕の気持ちをわかってくれる 奴なんです。これでおさらばってかわいそうじゃないですか。できることがあればしてあげたいんです。」ここまでご主人に愛される靴も幸せだなと思いました。

  • お財布の修理を承ろうとした際、事情を添えて有償になりますと価格を提示したら、悲しそうな顔になった30代のOLさん。少し考え込むようにした後、 「やっぱりお願いします。」と決意したように依頼。そのまま手続きに入ってもよかったけれど、せっかくなので「思い入れがおありなんでしょうね」と言う と、「私の”勝負財布”なんです!。1年貯金してこれを買ってから、試験や就職などうまくいくことが多くなって。だから、これがなくなると怖いんです。不 安になると、”この財布が守ってくれる”と自分に言い聞かせているんです。修理代は思わぬ出費でしたけど、それも『もっと仕事を頑張ってお金を貯めろ』 と、この財布が言っているのかもしれません。」とのこと。日頃、バッグや洋服の高額品に慣れていると、だんだん金銭感覚がなくなって「今日はまだ財布一つ しか売れていない…」と思っている自分が恥ずかしくなりました。


もしかすると「修理ですね、承ります。」と数分で済んでしまう接点である。《色々と手続きや確認をして売り上げにならない面倒な作業》と思うスタッフもい るかもしれない。しかし、多くの商品の中から選び、購入し、使い、壊れた時に悲しさを感じ、わざわざ時間を作って、店が開いている時間に持ってきてくださ る。そのお客様の思いを考えると、有り難い(有るのが難しい)の一言しかない。」という店長は、「この店舗のこのステージには、お客様のドラマが詰まってますだから惹きつけられるんです。」と言って笑った。

商品は同じでも、使い手を通して様々な価値に変わっていく。売った後に想いを馳せる店長の感性がすばらしいと素直に感じた。

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2014年5月13日火曜日

価値観が多様化する中でのマネジメント

婦人服を扱っている会社が、ある年新卒採用に踏み切った。これまでは、メインのお客様は百貨店のお得意様をはじめ、富裕層のご年配の婦人が多く、商品知識や会話力等々を考えると、どうしてもある程度人生経験のある方が良いという判断で、中途採用のみを行ってきた。それはそれで即戦力となり、店舗に安定感を醸し出していた。しかし、徐々にお客様と共にスタッフも高齢化し、安定感が逆に停滞感につながりかねない事態になった。会社としても、新しい顧客層を開拓しなければ将来はない。その一環として、あえてリスクも考慮した上で新卒採用の道を選択した。しかしなにぶん、入社した側にも受け入れる側にも経験がない。当然想定されるのは『世代ギャップ』。新人からすれば、母親くらいの先輩スタッフの中で、社会人としてのスタートを切ることになる。これまでは横の友達関係は問題なく作れても、縦の関係自体が初めてである。しかも、学生時代とはルールが全く異なる環境、敬語もうまく話せない中での接客等々、自分で選択したとはいえ「ある程度頑張ればやれるのではないか」という自信が砕かれていく日々。誰もが最初経験することだが、そのくらい学生から社会人というのは実は大きな開きがある。



しばらくして、新人が配属された店舗の店長と話す機会があった。その際、私自身考えさせられる話を聞けた。店長曰く、
「結論から言えば、本当にいい経験をさせてもらっています。日々新卒とのコミュニケーションギャップに驚きながら、いかに自分が狭い常識の中で生きていたかがよくわかりました。例えば、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)。若い頃から先輩にたたき込まれ、なにかにつけてホウレンソウを行うのは当たり前の習慣になっていました。けれども、学生時代は確かに〈報告は求められればするもの〉という環境でした。だから、入社の研修の際に“報告をしましょう”と言われても、実際には『誰に・どのタイミングで・どのような報告をどのようにするのか』ということが具体的にわからなければ、躊躇してしまうのは当然かもしれません。また、”元気良く接客しましょう“と言っても、周りを見れば、先輩たちはお客様のタイプに合わせて柔軟な接客をしています。”元気良く”と言われても誰をモデルにすればよいのかわからないし、本当に全てのお客様に大きな声で元気良く挨拶しても怒られないのか、という不安もあります。そういう心理を受け止めた上でこちらの指示を出さないと、知らず知らずお互いに心の溝が大きく広がることに気づかされました。私はきちんと指示をしたつもりなのに、新卒がその通りやっていない。そういう事象だけを見て、”反発しているのかな”、”あんなに言ったのにもう忘れているのかな(物覚えが悪い)”、果ては”やる気がないのか”という気持ちにまでなってしまうことも数回ありました。しかし、人を動かし育てる際に、そういう枠でとらえてしまうと、皆それこそ「箸にも棒にもかからない」人たちになってしまいます。
考えてみれば、私たちは接客をしながら、常に「このお客様はなぜ私の提案を受け入れないのだろう?」「〇○様はもしかしたら~と思っていらっしゃるのかしら?」など、心を読むことを心がけます。それと同じように、新卒が思う通りに動いてくれない時は、”なぜ?”をもっとしっかり見つめることと、指示の出し方をできるだけ具体的に細かくする工夫が必要だと痛感しました。「ここを綺麗にしておいて」ではなく、「このショーケースに指紋がひとつも残らないようにしてください」、「〇○があった時は、必ずシフトが一緒の先輩に口頭かメモで△△という報告を義務として行ってください」、「お客様が入り口から一歩入られた瞬間に“いらっしゃいませ”と、あそこに立っている人に聞こえる位の声を出してください。1回やってみましょうか。そう、そのレベルです。」よく「子供じゃあるまいし、一を聞いて十を知れ」などと言いますが、私は”子供”だと思うことにしています。子供はパジャマの着方も歯磨きの仕方もまるでわかりません。そこで、手順を一つひとつ教えます。最初は逸脱することも多々ありますが、しばらくするとコツを飲み込み、正しいやり方で自分なりに工夫をし始めます。新卒となれば実際には数倍早くコツを飲み込み、実践してくれます。それを最初から”大人扱い”することで、逆に足下を不安にさせてしまっていたのだと反省しました。まずは”こんなことまで”と思うレベルで一つひとつ教えること。それによって教える側も基本の再確認になりますし、世代間ギャップ等もなくなり、気持ち良く働けます。」
そして、英語も話せる彼女はこう付け加えた。
「海外へ行くと、異なる国の人と働くのは当たり前です。誰かが『これが私の常識だ』と主張し始めるとチームワークなど生まれません。お互い違うと認めているからこそ明確なルールを決め、ギャップを埋めようとします。日本で働くと、そのあたりが緩くなってしまうんでしょうね。これからの時代は同じ日本人同士でも価値観も多様化していますから、マネージャーとしてもっとそういう柔軟性が嫌でも必要になると思います。そういう点でも本当に良い機会でした。」


人はお互いに違って当たり前。それを束ねるには、この店長のような物の見方や度量が必要なのだと実感させられた事例だった。

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2014年5月1日木曜日

部門間連携力の強化こそがブランドを強くする!

店舗のスタッフも、オフィスで働くスタッフも、自分のブランドに誇りを持っており、一人でも多くのお客さまにその価値を正しくご理解いただきたいという情熱は変わらない。どちらが上とか下とかいうことでなく、それぞれがそのために自分の役割を果たそうと考え、日々努力をしている。しかし、自分の役割責任をしっかり果たそうと考えるがゆえに、他部門に対して要求レベルが高くなると共に、同じ仕事をしているわけではないからこそ、優先順位のくい違いなどで、軋轢が発生しやすいのも事実である。難しいのは、他部門の仕事概要くらいは理解していても、お互いに忙しくて、今実際に抱えている課題や置かれている状況をつかむ余裕がないことである。もちろんミーティング等で情報共有機会は設けていても、なかなか踏み込んで、問題・課題をどう乗り越えるのかという議論をしっかり行える状況はまれである。お互いに「今こういう状況なので、ご協力よろしくお願いします」という表面的な報告で終わってしまっているケースも多い。しかも、同じ社内だという甘えから「わかってもらったはず」「理解を得られたはず」と思い込んでしまうところに、問題の原因が潜んでいたりする。そういった認識のずれを放置すると、「どうしてわかってもらえないのだろう」「なぜこんな要求ばかりしてくるのだろう」という他部門への不信感につながっていくことにもなりかねない。よく店長やスタッフから、「なぜこんな商品配分なのか理解できません。ウチの店舗ではもっと~という物が売れるのに。それも機会あるごとに伝えているのに、なぜかわかっていない!」また、「必要な時に必要な商品を素早く入れてもらわないと売り逃しになるのに、そういう状況がわかっていない!」などなど、日々数字と格闘する立場だけに、不満を聞くことも多い。一方、MDの立場からすれば、切実に1点でも多く売りたいのは店舗と同じである。そのために必死に考えているという自負もある。それなのに、お互いに心理的に溝ができてしまうのは、非常にもったいない状況である。


公募で店長からオフィススタッフになったある女性が、そういう状況を目の当たりにして言ったことがある。「違う立場に立ってみて、つくづく自分が知らない世界があったんだなあと思いました。最終的には、やはり本当に必要な情報、つまり、お互いに置かれている状況やそれをどうしたいと思っているのかという思いを共有できるかどうかで、動き方や連携の仕方は全く変わってくると感じます。実は、本当に強いブランドというのは、それを実践し、協力し合える状況を作り出している会社ではないかと思います。全ての仕事は”ニーズを満たすためにある”と考えれば、私自身ももっと視野を広げ、関係者の仕事に興味を持ち、関係者のニーズを積極的に把握し、それにどう対応すると全体が良くなるのかという柔軟な発想を持ち続けたいと思います。それは店頭でもオフィスでも全く同じです。一人一人のちょっとした考え方の持ち方で、もっとお互いに感謝し、助けあえる会社になると思います。私がオフィスに来たミッションに、それも含まれると思って頑張っていきます。」


話を聴きながら、昔、上司から情報ということについて教えられたことを思い出した。“情報”の「報」は知らせるという意味だが、「報いる」という意味でもある。では、何を知らせたり、何に応えるのかといえば、「情」=人間の感情である。文書や口頭で発信される言葉の背後には、その人の感情がある。それをしっかりくみ取ってどう応えるのかを考えることで、仕事や連携がうまくいくという教えだった。TOPの思い、苦情をおっしゃるお客さまの思い、本部からの通達の背景にある思い、店舗からの報告…全て何らかの思いや考えがある。そこまで読む力を磨きなさいということである。「人の心を掴むには、まずその人の考えを知ること」その本質を良くつかんで店舗で実践し、多くのファンを創り出し、スタッフからの信頼も厚かった彼女は、店舗同様、どこで働いても良い影響力を発揮し、求心力のあるいい仕事をしていくだろうと納得させられたのだった。

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