2014年6月25日水曜日

ラグジュアリーブランドの「伝統と革新」は店舗マネジメントに置き換えると「今日の売り上げと将来の売り上げの基盤づくりの両立」!

イメージ 1
あるラグジュアリーブランド店長が、「本当は会社からは、ちょっとお値段は張るんですが"洋服を中心にシーズンごとにコーディネートで買ってくださる富裕層のお客様を中心とした店舗作り" を期待されています。しかし、当然日割り予算や月間予算の達成もしなければいけません。すると、どうしても今日の売り上げにつながるお客様を中心に接客を することに関心がいきます。バッグや小物と言われる商品は比較的売れやすいし、効率もいい。しかし一方、洋服を中心としたお客様となると、お客様の掘り起こしの大変さがあり、接客するのにスキルも知識も粘りも必要で、効率も悪い。必死に追いかけてもダメだったとなると、費やした時間の分だけむなしさもある。だから、保険みたいなもので、数字につながる安心感を求めて、つい目の前の売り上げばかりを優先してしまいます。毎回これではだめだと言い聞かせているんですが、発想や習慣を変えるのは大変です。」と悩んでいた。


確かにこれはジレンマである。「短期の売り上げ」と「中長期の売り上げ」は、一見すると「今日を積み上げていけば中長期も安定する」という連続性があるよ うに見える。しかし、実は短期の売り上げを創る中身と中長期の売り上げを創る中身(発想・身につけるべきスキル・とるべき行動)はそれぞれ異なる。それを限られた時間で同じ一人の人間が並行してやらなければならないと言うことである。意外にこれは難しい。どうしても偏りが出やすいのが人間である。あなたには日々忙しい中で、「将来のために〇○の資格試験に挑戦しよう」と教材まで買ったのに、「ああ、今日も時間がとれなかった」と結局むなしく終わったという 経験はないだろうか。


イメージ 2ではそれを並行して行えるようにするカギは何か?納期がはっきりしていること、そして今日の売り上げ数字など「見えるもの」に人は関心や問題意識を持ちやすい。なぜなら人間の情報の大半は「視覚」から入ってきて、それによって多くの判断をしているからである。一方の将来につながるお客様づくりの働きかけはそれほど結果となって毎日端的に見えてこない。 DMを出しても返りがない。知識の勉強をしていても本当に活かせるかどうかが見えない。すると、「こんなことに時間を使っていてもいいのか」という罪悪感すら生まれてくる。それを脱却させるよう、店長は仕掛けを考えなければならない。つまり、あえて納期を設定すると同時に、見えにくいことを【見える化】させ、安心感を持たせてそれに注力させる努力である。例えば、「DMはこういう品質で100枚出せば必ず○%の返りはある。だから、信じてまずは~までに○枚書いて検証しましょう。」と伝え、その結果を表にしていく。「~に関する知識をロールプレイングできちんと語れるレベルになれば、試着してくださる率は○%上がる。だから、あきらめずに〇○を勉強し、~ までは○人以上のお客様に必ず試着を勧めましょう。」など、説得材料を用意し、そのプロセスをデータ等で見える化し、【着実に将来に向けての準備は進んで いる】という確信を持たせることである。それにあてる時間のウエイトは、状況や個々のスタッフの習熟度レベルによって異なるが、「必ず○%の時間は将来の 顧客づくりの時間に充てる」などの基準を打ち出すことも、目先に流されないためには必要である。




ラグジュアリーブランドは歴史を重ねていく責任がある。そのためには「伝統と革新」と言われる。それは店舗マネジメントに置き換えれば、ラグジュアリーブ ランド店長として「足元を固めることと将来への準備」を両立することに他ならない。それを常に頭に入れてマネジメントするからこそ、お客様が途絶えない状況を創れるのである。
その取り組みのために今日の売り上げに支障が出るという場合は、【どちらを取るか】という発想ではなく、現状のオペレーション効率を上げる方に知恵を使っ た方がよい。なぜなら、それができなければ、おそらくこれからもずっとその店舗は革新も成長も起こらず、「結局できない」というあきらめ癖だけがついてし まうからである。2つの異質のことを並行して考えなければならないからこそ、店長だけでなくスタッフにも発想の広がりや成長の機会が広がると考えることである。

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2014年6月19日木曜日

私はいい方々ばかりに恵まれてきました…それって鏡の法則?

百貨店での販売スタッフの経験をした後にラグジュアリーブランドで店長を行っていた方が、ブランドトレーナーに任命された。私にとってその方は仕草、仕事ぶり、人への配慮、全て学ぶべき先生だった。特に尊敬に値したのは、見えない努力である。社内トレーニングで使用する資料を作成するにも、原文を全て自分で丁寧に翻訳し、最も大切なことがスタッフに 伝わるよう文章にこだわり、図や絵を使いながら、美しいデザインになるように最高の資料を自分で作成していた。また、それを使ってプレゼンテーションを実 施するまでに、何度も何度も練り直し、その方のトレーニングは洗練の域に達していた。何が彼女をそこまで駆り立てるのか不思議に思って聞いてみると、「ど ちらかといえば、モノづくりの職人に近い感覚かもしれません。やりながら、”ああ、ここはまだ改善の余地がある”と思うと、それを放置できない。妥協は嫌 なんです。これは性分かもしれません。」という回答だった。しかし、その積み上げがあるだけに、ブランドの奥深い世界観が、資料だけでなく、彼女の静かな 語りに込められた想いを通じて、聴いているスタッフの心を大きく動かしている様子がよくわかった。

その彼女がよく口にしていたのが、「学歴も語学力もたいしてない私がこのような機会を与えてもらえるのは、私の努力というよりは、どこへいっても、何をして も、本当にいいお客様や上司、仲間に恵まれているからです。」という言葉だった。
しかし現実には、それぞれの職場で、癖を持った人や扱いにくい人もいる。 チーム内に仕事のスピードが遅いメンバーがいることで、彼女が目指すレベルの仕事を納期内に終えるのが難しい状況も発生しうる。おそらく彼女一人でやった 方がいい仕事になるかもしれないとさえ思うケースもある。しかし、彼女からすると「確かに癖はあります。でも、○○さんからは△△ということを学ばせても らいました。また、~という点は私にない素晴らしい点なので、それを学ぼうと接していくと、私に対してはしっかりサポートしてくれて多々助けてもらってい ます。第三者から見る印象とはまた異なるんですよ。」ということも言われた。性別も年代も経験も越えて、どういう人であっても、“自分よりこんな点が素晴 らしい”という美点を事実に基づいて具体的に挙げる。むしろ、"自分の方が何も知らない、不器用なので"という姿勢は一貫していた。

【鏡の法則】という言葉があるが、そう言われて嫌に思う人はいない。むしろ、日頃の彼女の裏表のない態度や行動から、「こんな素晴らしい人にそこまで褒め てもらえるなんて」という思いから、失敗を挽回するかのように積極的に彼女の役立つようなサポートをしようとする。結果的に人を協力者にする名人技を目の 当たりにできたことは、私の人生にとっても本当にラグジュアリー(=贅沢)な出会いだった。

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2014年6月13日金曜日

派遣スタッフをどう活用すればいいの?

先日、ある会社の人事の方とお話をしていて、以下のような相談をいただいた。
「うちでは販売スタッフが不足しているんですが、世の中全体が人手不足でなかなか集まらない。そこで、派遣スタッフをお願いすることになった。お客様か ら見れば社員も派遣も関係がないので、しっかり接客をしてもらうためにもブランドの歴史や商品知識を一通りは理解してもらい、自信を持ってお客様に提供し てほしいと思っている。だから、ブランドや商品についての研修時間も作り、トレーナーが熱心に教えている。ところが、派遣されてきたスタッフの中には、あまりブランドに興味を示さず、商品知識も自分から熱心に吸収する姿勢がさほど見られない人もいる。販売経験 もあるので、どこで何を扱ってもそれなりに売れるという認識を持っていると思われる。もちろん、最終的には売ってくれればいいという割り切りもできるが、 ブランドアンバサダーとして店頭に立ってほしいというのは求めすぎなのか?」
あるサイトによると、「嫌われる派遣先のチェックリスト」の中に『愛社精神などを強要する』とある。果たして、ブランドに対する愛着を持ってほしいというのは求めすぎなのか?そうでないのか?あなたはどう思われるだろうか?



実は大切なのは”愛社精神など“という箇所ではなく、”強要“という部分である。「このブランドで働く以上、ブランドを好きになれ」と強要されても、「私 は“ここへ行ったら?”と派遣元に勧められて来ただけですから」「きちんと商品説明して販売できれば問題ないのに」という感情的な反発を生んでしまう恐れ もある。となると、強要ではなく、お客様同様、いかに自ブランドに興味を持ってもらい、好きになってもらえるかを工夫・研究することが大切になる。その方法論として、以下の3つが考えられる。
  1. ブランド知識・商品知識を、「教える」のではなく、お客様に魅力を伝えるように派遣スタッフにも魅力を売り込むというコンセプトで導入研修を組み立て る。それこそ、販売プレゼンテーションのつもりで、愛着を持ったトレーナーがいかにそのブランドが素晴らしいかを派遣スタッフに刷り込むイメージである。 驚きや感動の情報が多ければ多いほど愛着につながる確率は上がる。また、「ぜひ自分から人に教えてあげたい!」という気持ちにもなる。
  2. 【朱に交われば赤くなる】を活用する。配属された先の店長やスタッフが、当たり前に自ブランドや商品の素晴らしさを繰り返し口にしていると、人間は暗示 にかかりやすくなる(全員ではないが)。商品を大切に扱い、お客様に親身になっていい物を選んでさしあげる、お客様も喜んでお帰りになる…それが風土に なっていると、自然と“表裏がない、きちんとしたブランドなんだ”と思い、自分も周囲の行動を真似るようになる。
  3. プロセスを見て褒める。派遣スタッフのミッションとして「販売」がメインであれば、当然結果数字は意識する。しかし、結果だけを見て貢献してくれている ということをフィードバックするのではなく、”プロセス“を重視したフィードバックを行うと効果的である。例えば、”あの商品の説明の仕方が素晴らしかっ た“、”商品の組み合わせが絶妙だった“、”適切なタイミングでブランドのストーリーが語られていて良かった“などと意識的にフィードバックする。それに よって、他のスタッフがどのようにブランドについて語っているのにもアンテナが立つようになる。

以下は、あるラグジュアリーブランドの人事担当者が、「派遣からぜひ社員になりたいと、(社員以上に)頑張るスタッフが多い店」として教えてくれた店舗の店長の言葉である。
「とかく『派遣は使いにくい』と固定観念を持っているケースも多いのですが、上から目線で"派遣を使う"という発想では溝は埋まりにくいのではないかと思 います。期間の制約はあるものの、その中でいかにその派遣スタッフに“この店舗で働けて良かった”と思ってもらえるようにするかという発想で関係を構築し ていくと、期待に応えてくれることが多いものですよ。」


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サービスデザイン研究所
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代表取締役/サービスデザイナー 袋井 泰江(Fukuroi Yasuko)













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