2014年9月25日木曜日

ベテラン店長の固定観念を溶かすには何が必要?



先日うかがった会社で、営業担当者から以下のような悩みを聞いた。

「この半期の担当店舗の予算達成傾向を見ると、ある特徴があります。それは、成績不振の店舗の店長は、いわゆるベテランです。店舗に行って成績不振の原因を聞くと、共通してこれまで以上にスタッフと共にお客様の呼び込みや接客に一生懸命取り組んでいるということを訴えてきます。では、「なぜ?」と聞くと、他律的要因(景気・百貨店の客数減・天候・会社の施策・会社の支援等々)が次々と出てきます。実際に支援が十分かと言えばそうではないため、無下に厳しく言うこともできず、一応受け止めはします。そして最終的に『他律的な要因に求めていても数字は上がらないから、まだできることがあると考えて取り組みましょう』と促すと、オモシロくなさそうな顔をします。おそらく納得はしていないと思います。実際、その場では『わかりました』と答えても、次に行った際にはまた同じようにできない言い訳をしてきます。では、スタッフはどうかと言えば、店長自身はスタッフは自分の指示に従ってきちんと動いてくれていると安心していますが、実は店長から心が離れていて、表面だけ合わせているケースも多々あります。そういうことに気づいていないことも成績不振に影響を及ぼしていると思います。ただ、あの手、この手で何とか気づいてもらおうとするのですが、長年かけて作り上げてきた自分の考えに固執して、なかなか発想が広がらずに困っています。こういうベテラン店長を、年齢も下で経験も浅い私がどのようにリードすればよいのかアドバイスが欲しいのですが。」



もちろん、一つの正解があるわけではないが、主なポイントを挙げると以下のようになる。
①固定観念とはひとつの思考パターンであり、知らず知らずそのパターンで考えることが当たり前になっている。ゆえに、固定観念を溶かすには、この思考パターン以外の思考パターンを新たに定着させるトレーニングが必要である。例えば、よくあるパターンを挙げると…

『組織変革ファシリテーター(ファシリテーション能力実践講座:堀公俊著)』(東洋経済新聞社)より抜粋

つまり、右の吹き出し部分を粘り強く質問し、考えさせるトレーニングが必須である。せっかく店舗に行って対話をしていても、『傾聴』ということを重視するあまり、ただ聞くだけで終わっていないだろうか?大切なのは、適切なタイミング・適切な質問で思考回路を広げさせること、それこそがコーチングの効果につながる。


②話していることを極力文字にして書き出し、記録として残す。
言い訳をしている時は自己防衛心理が中心のため、とにかく思いついたことを次々述べようとする。それを聞いていても、感情的にイライラしたり、時間切れになってしまう。大切なのは、キーワードを書き出し、見える化することである。そして「要するに、要因としてはここに今5つ挙げてもらいましたね。その上で、まず自分ができることは何ですか?」など、お互いにメモしたことを見ながら思考を整理することである。

そういう取り組みをしないで、「あのベテラン店長はいいわけばっかりで何もしない」というレッテルを貼ってしまと、相手も「結局悩みを伝えても本気では答えてくれない」と受け止め、お互いの溝が埋まることはない。これは店舗に限らず大切なことだと私自身、自分に言い聞かせている次第である。

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2014年9月10日水曜日

デザインされた接客

少し空き時間ができたので、あるラグジュアリーブランドの路面店にふらりと入った。何かを買う目的ではなく、『どんな感じなんだろう』という興味だけである。だから内心、『スタッフに積極的に質問されたり、売り込まれたりしたら対応に困るな』という心理もあった。1階を少し早足で見て回った後、地下もあると知ってちょっと勇気を出して降りてみた。お客様数も少ないので、できるだけポーカーフェースで素っ気ない対応をしてすぐ上に上がってこようと考えながら。そういうドキドキした心理に対して、思いがけず以下のような展開が待っていた。


階段を数段降りたところで下を見ると、すでに女性スタッフがこちらに対してお辞儀をした姿勢で待っている。「あ、待ち構えている」と思った瞬間、彼女はゆっくり顔を上げてこちらを見た。そのときの笑顔といったら…。心から”ウエルカム”という気持ちを表現している表情だった。そして一言、「ようこそ」と添えた。私が「ちょっと見てみようと思っただけです。」と言うと、「もしお急ぎでなければ、せっかくの機会ですからくつろいでいってください。なかなかない機会だと思いますので、楽しんでいただければ私たちも嬉しいです。」と答えた。そして、商品の話ではなく、「こちらにはお仕事ですか?」「以前に私どものブランドのお店には行かれたことがありますか?」「いかがでしたか?」と、答えやすい質問をしてくれるので、世間話的に会話のキャッチボールが始まった。また、興味を示すような表情で相づちを打ってくれるので、いつの間にか緊張もほぐれ、”せっかくの機会だから、こういう体験も悪くないな、いろいろこの機会に話してみよう”と思うようになっていた。

それから自然な流れで、ブランドの歴史、スタッフのブランドへの思い入れ、この店舗で仕事をする素晴らしさなど、話の幅が広がり、弾んだ。どんな話題に対しても話ごたえがあった。そこで「最初のウエルカムは素敵な笑顔でしたね。」と伝えると、「そう言っていただけると嬉しいです。実はこの地下フロアを任されてから、私なりに考えた接客の流れなんです。」とのことだった。1階は比較的お客様も入りやすいが、そこで買い物を済ませ、その後地下に降りてこられる方は少ない。もちろん1階のスタッフに地下への誘導協力は依頼するが、それだけでは受け身で終わる。そこで、地下に降りてくるメリットとして、従来のような「1階にはない●●の商品が置いてある」「椅子もあるから休憩できる」というレベルではなく、「地下に来ると、1階とは違って”くつろげてちょっと特別感のある体験ができる、行かないともったいない”」というレベルを目指した。そこで、入り口から出口まで、徹底的にお客様視点で”何が必要か”を考えたという。

  「期待以上のウエルカム」で新鮮な驚き・興味アップ!
→「通常の商品の話ではない会話で緊張がほぐれる」
→「自分の話に共感し、興味を持ってくれている(安心感・優越感)」
→「ここで話ができたからこそ、日頃以上に深い知識や珍しいエピソードを知ることができた!」
→「どうせ高額のものを買うなら、こういう空間・接客で購入したい」
→(地下から1階に上がる際には)「”特別な空間だったな”(余韻)」「ブランドを身近に感じられたな」

私が体験したのは、上記を踏まえて手作りでデザインされた接客の流れだった。
例えば、「期待以上のウエルカム」のためには、彼女曰く「音がした瞬間、階下に立ちます。頭を下げてお待ちするのは、その間にまさしくキャストとしてゲストをお迎えするという気持ちを整えるのと、”顔を上げたらどんなお客様なんだろう”とわくわくしながら想像する。すると、顔を上げた瞬間、『あ、やっぱり!靴音からするとこういう感じの方だった』とか『全然違う印象の方だな』と素直に興味がわく。その流れで会話に入る。」と教えてくれた。

30分ほどして見送られながら1階に上がったとき、いつもの明るい日差しの店舗の風景になった。
そのコントラストで、確かにちょっと別世界、”隠れ家”的な余韻の残る体験だった。帰り道、何より、「あれがない、これがない」という方向に頭を使うのではなく、お客様視点でデザインを描くことによって、今あるものに魂を吹き込もうとする彼女の努力が光って見えた。







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2014年9月1日月曜日

札幌発の異業種交流“店長カレッジ”が生み出したもの ~北海道のサービススタンダードを自分たちで高め続けよう!~

まだ肌寒い4月の札幌で、緊張した面持ちでスタートした毎月1回の【店長カレッジ】も、8月で全5回の課程を修了しました。回を重ねるにつれ、お互いのコミュニケーションがどんどん深まり、休憩中も店長としての悩みを共有したり、熱心にアドバイスし合う姿勢が見られました。また自発的にお互いの店舗を訪問し、ねぎらったり、情報をシェアする活動も行われました。


店長カレッジの最大の目的は、変化が激しい時代に経営者感覚を持って自律的・戦略的に自社ならではの顧客価値を関係者と創造するためのリーダーシップとマネジメントのあり方を具体的・実践的に身につけることです。そのためには、視野・発想を広げる必要がありますが、”社内の当たり前”だけにどっぷり浸かっていては固定観念は強化されるばかりです。あえて外部とのネットワークを強化し、新たな情報を柔軟に活用できる状況を創ることが大切です。しかし、不規則なシフトで、日々忙しい店長からすると、「わかってはいても具体的にどこから手をつけて良いか…」と考えてしまうケースも多いのが実情です。店長カレッジは、そのネットワークづくりと、ビジョンの実現の支援を行います。「自律的に学ぶ」が前提ですので、手取り足取りではなく、テーマについて研究し発表し合うという、まさにカレッジスタイルで進めますが、それぞれの立場・状況・発想によってユニークな意見も多数出され、私自身大いに刺激を受けました。


以下は、ある店長の声です。
「5回の講義を通じ、今まで考えたこともなかった側面から物事の本質に気づかされました。また、様々な異業種の方々とふれあえ、より密に交流できたのも私の財産です。正直、仕事・問題に追われる毎日でしたが、ようやくこの講座を通じて、問題を正面から向き合う事の大切さ、準備・計画の重要さを認識して、今まさに心に焼きつけたところです。高い問題意識を持って人より世の中の一歩先を常に意識してこれから仕事に邁進していきたいと思います。」
この店長が任されている店舗は、スタッフ約50名、坪あたりの売上高は業界トップクラス。売り上げの数字だけでなく、作り手との連携による商品の品質管理、店舗という空間を非日常にする空間管理、”感動“を生み出すレベルを目指すスタッフ教育、紹介やリピーターを創り出すための戦略推進、徹底したコスト管理等々、まさに店舗経営者として上下左右へのリーダーシップが求められています。それだけに、常に「このままでいいのか」という自問自答もあります。端からは「成功している店舗」と見られるだけに、さらなる期待に応え続けるための新しいチャレンジが必須なのです。サービスに終わりはありません。「答えは現場にある」「答えは自分で創り出す」をモットーに、自ら見て、聞いて、触れて、感じて、を熱心に行っている。そういう学びの姿勢が、店長カレッジでも遺憾なく発揮されていました。まさにお互いが生きた教材なのです。


最終的には、地域的なこともあり、「自分たちの取り組みを通して北海道のサービススタンダードを今以上に引き上げよう!」を合い言葉に、同窓会を行うこととしました。次に会う時は”さらに成長し合っていよう”がテーマです。札幌発の「店長カレッジ」の取り組みは、まさに私のビジョンでした。”こんな取り組みができたらいいな”ということを数年前から考えていました。しかし、自分一人では何もできません。ただ、想い続けていると手をさしのべてくれる協力者が現れてくれました。思い続けること、あきらめないことは本当に大切なことです。次は東京での開催、そして、さらに”サービスデザイン”という視点で掘り下げること…ひとつずつ改善を重ねながら種をまき続けたいと思います。ちなみに私のモットーは”蒔かぬ種は生えぬ、蒔いた種は生える”です。


店長カレッジの主なテーマを以下に紹介します。
※討議・ロールプレイング・実践課題あり。


ご興味のある方は、ぜひ下記ご案内をご覧ください。
店長カレッジのご案内(PDFファイル)
より詳しい情報をご覧いただけます。

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